繭太 びっくりしたなぁ、もう。充分にやり過ぎたはりますやん。
   これで“中”ですか、村長。

繭美 いいたいこと全部言うてサッパリしやはりましたか?

繭太 村長は、どや知らんけど俺はサッパリしたで。
   ただしあんだけ好き放題言うて大丈夫かいな。

繭美 多分いっぱい怒られるわ。ウチ知らんぇ。

村長 冷たいこといわんと一緒に怒られてくれや。

繭太 俺が一緒に怒られたる。まかしとき、村長ッ。

繭美 とにかく、これで村長さんの気持はわかって
   貰えたと思うし、今度はホントに終わっても
   エエやろか?

村長 終わろ、終わろ。ご苦労さんやったなぁ。
   しんどかったなぁ。ほんでもようやってくれた二人共。

繭太 ほな、俺と繭美ちゃんの労をねぎらって
   食事でもご馳走になろか。

繭美 賛成ッ。ウチはイタリヤ料理がエエと思うッ。

繭太 あかん!ダイエット中やから湯豆腐にしとけ。

村長 まぁまぁ、そう言わんとラーメンぐらいで折れ
   合うたらどうやねん。
みんな 反対!賛成!異議あり!議事進行!
涼やかな野鳥のさえずりと、嵯峨色の風の中
小倉山の稜線をバックに立ち上がる三人に
めまぐるしく木漏れ陽が降りかかりました。

   野苺の艶やかな赤と、野薊のはちきれそうな蕾と
   はこべや毒だみの白い花、無造作に配置され
   勝手気ままに自己主張する、まゆ村の雑草達は
   まるで、村長と繭美ちゃんや繭太君達のように
   見事な連携プレーで化野の初夏を演出して
   いました。

もうすぐ京都は、うだるような夏を迎えます。
下界より5メートルほど高いまゆ村の丘には
くぬぎとあら樫の梢が交叉して緑のドームを作ります。
自然はいいなぁ、緑はいいなぁ。街はかわってしまっても
木や草や虫達は、子供の頃に遊んだ双ヶ丘を
思い出させてくれ、御室の山を思い出させてくれるんだなぁ
と妙に折目正しい気分にさせられて、場違いな
センチメンタルジャーニーを口ずさんだりする村長でした。

                    終わり。
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