表紙

村長 おっしゃる通りでございます。一言半句もござ
    いません。しかし怖おすなァ繭介さん
    は・・・。敬遠しやはる人の気持がよう
    わかりますヮ。

お繭 敬遠したはるのは、どっちかいうたら繭介
    はんの方どすけど。

村長 まぁ、いづれにしてもお二人さんの関係にはビックリ
    しましたヮ。実は私も繭介さんのお考えに
    賛成で、そのことを主張したいと思ってました
    んですヮ。“此頃の若い者は年寄りを
    ないがしろにする”とか、“社会全体に敬老
    精神が欠けてる”とか、その通りやけど何か
    嘘っぽい感じで違和感を覚えてしまいますねン。

繭介 そこやッ。ワシの持論は事実を見据えて
    議論せんかィ、ということや。黒いカラスは
    白くあって欲しかってもヤッパリ黒いねン。
    徳川の300年間は世の中が動かへんかったから
    経験だけに価値があったんや。経験だけなら
    ボーと生きてるだけで勝手についてきよる。
    明治であれ、平成であれ、世の中が動き始
    めたら動きに対応出来るだけの知識や
    知恵が求められるわなァ。結果として“長いこと
    生きてますねン”だけでは、どないもしようがない。
    年寄りが威張ってた昔にしたかて、現実には
    見てくれだけの長老気取りをワシ等自身が馬鹿に
    したり軽蔑したりしてたしなァ。

村長 ほんで、どうしたらエエ思わはります?