ブラウスが風をはらんでふくらんだ
女の匂いが吹き抜けた
今日こそ 彼女を抱きしめる筈の
何度も 何度も練り直した 作戦通りの高雄行きだった


二人がクラブの合同コンパで知り合ってから 既に半年が過ぎていた
恋を うちあけるチャンスにしても 二度や三度はあったのに
結果的には何事もなく 最初のままの良いお友達で今日まで来たのは
思えば 大変な失敗だった
彼にしても 彼女にしてもプライベートな感情をぶっつけ合うには
あまりにも親しくなり過ぎたのだ



     大きな枝が道にかぶさり
     苔むす岩肌が視界をさえぎった
     風が踊り 青葉が踊り 木漏れ陽が踊っていた
     目の前を行く 彼女のお尻が弾んでいた
     最早 おさえがたいほどに 彼の心臓は高鳴った
     人影も まばらな高雄の夏の
     今度こそ この次にこそ 何かが起こる 深い緑の繁みが迫った
表紙