八体地蔵の三叉路が二人の愛を引き裂いた
笑顔しか見せなかった男の 沈痛ともいえる無言
不信と 怒りと 絶望が 嵯峨野の初夏を 凍らせた
「さよなら」
「 …… 」
もはや止どめようもない とりつく島もない
何と馬鹿で 狭量な男よ!
何と脆くて あやふやな愛よ!
葉裏に光る野苺と まぶたに滲む血の涙
ことの終わりを告げるには あまりに青き風の中
表紙