耳と尻尾とが出来たら、兎は既に出来上がったようなものです。
そんなわけでハード面での準備はととのいました。
次は、ソフト面での準備にとりかかります。
少々うんざりなさるかも知れませんし、耳にタコが出来る
体質の方もいらっしゃるかも知れません。
猫でも過剰なほどにページをさいたのに“ごめん
なさい、ごめんなさい”と繰り返しながら
でも、やはり言わせていただかないわけにはいかない
のが、イメージづくりと感情移入に関するお話です。
テレビの物作り番組で初めての素人さんが作ったとは思えない
ほどに見事な作品が出来上がるのを、ご覧になったことはありませんか。
私は見るたびにスゴイ、スゴイと驚かされています。
でも、驚きはしますが自分もやってみたい、とは思いません。
何故ならば、指示された部品を買ってきて、指示された通りに
作っていけば、誰がやっても同じようにスゴイものが出来ること
をわかっているからです。たとえ出来上がったものを売る気の
ない素人さんが作っても、それは作品ではなく商品である
ように、私には見えてしまいます。
私は商品と作品との違いは、まさにこの一点に
あると信じています。商品は正しい位置に
正しい方法で、正しい形や正しい大きさの
部品をつけていきますが、作品は位置も
方法も形も大きさも、かならず正しくなくては
いけないわけではありません。
一般的には“そんなわけないやン”といわれて
しまうような事でも物でも“私が気に入ってるン
やからそんでエエやン”ということで一件落着です。
勿論、変な人が作った変な作品も
困ったものですが“いやァ、これエエやン”
と一般の大衆を振り向かせるような
グッドデザインは、案外正しくはない
作者の思い入れとか、こだわりとかによって
生み出されているのではないでしょうか。