しばらく降り続いた雨上がりの五月晴れ
嵯峨野の朝の風も樹も 瓦も道も輝いていた


葉をひろげたばかりの櫟林を縫って鳥がとぶ
柔らかな緑に染まって 陽が走る
樹海の水底に 妖精が奏でる葉ずれの讃歌


    


    少女は空を仰いだ
    黒髪がこぼれ 白い顔に こもれ陽が揺れる
    セーターの胸のわずかなふくらみに陰がさす
    小さく口を開け
    小さく ほほ笑んで閉じた目の 長いまつげ
    鐘の音が流れ 梢に吸われては流れ
    消えては 又流れて あだし野を覆う



物みな新しく萌え出ずる緑の中に 天使のごとく舞いおりて
あたりを払う 細身の少女
表紙