息詰まる緊張の糸が
今 まさに切れるというその直前から
時間は無限大に引き伸ばされ
空間は ほんの数メートルに圧縮されて
かつて経験したことのない
不安と圧迫感に襲われていた
これから何がおこるのか
それにどう対処すればいいのか
それぞれの脳裏にめぐる想いは
止どめようもないほどに
高速回転するばかりで
何一ッまとまった答えを出せないでいた
      いやや あかん!
      自分の口をついて出た言葉とも思えぬ声であった
      人影の途絶えた嵯峨野の真昼
      二ッの影は重なって 幼い恋の戸惑いに
      動く気配も見せぬまま…
表紙