私で3代目になるわが呉服店のショーウィンドーには
オランウータンのモビールが揺れています。
場違いな、と思われるでしょうね。
実は私も最初はそう思っていましたから・・・。
ところが色鮮やかな晴れ着の中では
白一色の繭のオランウータンが意外にも道行く人達の
足を止めてくれるのです。
物で溢れる21世紀の日本で注目を集めたければ
“キーワードはオリジナリティですよ” と耳にたこが出来るほど
繰り返されても、遠い世界のことのように感じていましたが
呉服店のオランウータンは、ある種のオリジナリティだったのですね。
内緒だけど、シンポジウムとかで仕入れてくる主人のアイディアよりは
ずっと効き目があるのです。
私のオランウータンは愛想もせず弱音も吐かず
今日も沢山の視線を浴びて華やかな色、又色のジャングルを
楽しんでいるようです。
呉服屋のオランウータン

       ― ショーウィンドーの主役 ―
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