狭い敷地にゆとりの空間を目指したわが家の子供部屋は
屋根裏にある。 騒音と排気ガスと低俗な世間とを
つなぐたった一ツの小窓を閉めれば、そこは完璧な俺に
とっての夢空間だ。
アイドルのポスターもない。彼女の写真もない。
受験のための本と糸を縮めてぶら下げた
魔女のモビールがあるだけだ。
勉強に疲れたら、俺はベッドに転がってモビールの魔女と
会話する。多感な青年の青春はホーキに乗って空を飛ぶ
魔女と一緒に夢に舞う。大学生になったら
本物の女の子と恋をして、朝から晩までマンガを読んで
朝から晩までゲームをやるぞ。
野望を抱いて勉強にはげむ俺と、赤と黒のコスチュームに
白い手足のかわいい魔女と、俺たちの燃えあがる思春期は
いまや満開直前だ。
屋根裏の魔女
― 思春期は8分咲き ―