最近では噂をする奴さえいなくなった、消息不明の彼から暑中見舞が
舞い込むなんて・・・。

私と彼とは誰もが認めるライバル同士だった。勉強を競い、女を競い
でも仲間達のいない所では互いに認め、許し合う親友同士でもあった。
最後に会ってから30年もたつだろうか。その後私は結婚し子供を育て
会社をおこして今日に至るのだが、彼はどんな人生を歩んできたのだろう。
世間は彼の才能に気がつき充分に評価しただろうか。
彼も又、世間の期待に応えることが出来ただろうか。
あの頃、夏休みになるとよく二人で琵琶湖へラブハンティングに出かけたものだ。
燃える夕日を正面に受けて結果を出せぬまま、やはり二人で悄然と家路に
ついたものだ。発情期だったとはいえよくも青春のかなりの部分を無駄にして
“挫折が人をつくる” などとほざいていられたものだ。ホント、彼はいい奴だった。
あの頃の私達は脳みその半分を女色に染められた河童だったのだ。
河童といえば、私はひそかな青春の思い出を繭のモビールに託して部屋の
真中に吊っている。そうだ、私の持物の中で一番大切なアレを一番大切な彼に
持って行ってやろう。煙草のヤニで変色したカッパのモビールを何かの箱に入れ
新聞紙でくるんでプレゼントにしよう。シャワーを浴びてビールを飲んで
遠足前夜の小学生のように、窓のガラスに手を振ってみた。今夜はキット眠れないだろう。
青春のカッパ

      ― 友よ、友よ ―
表紙
親も女房も仕事仲間もそれぞれに大切ではあるが、やはり私にとっては
親友が一番だ。明日彼に会ったら、まずは乾杯してつもる話をしよう。
ベルトのサイズは変わっても会えば間違いなく学生気分だ。
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